ペペシチュー その3
去年の猫と最後のお別れ、それはマリモンにとって残酷なお別れであった。
その日の夕飯は母親の作ったシチューだった。
まだその頃は現在同棲中の彼女とは付き合っておらず、実家住まいだったマリモン。
母親の作った手料理を自室にて食するマリモン。
マリモン「うん。ウマい。シチューがというか、やっぱりタダ飯はうめえや。」
40過ぎて子供部屋おじさんのマリモン。
母親の料理はお世辞にもうまいとは言えないが、タダ飯なので文句は言わず食べる。
マリモン「うん?この肉はなんだろう?鶏肉でも豚肉でもないようだし…?」
今まで感じた事のないような異様な肉の歯ごたえと独特の獣肉の味。
いくら味オンチのマリモンでも、異様な味覚を感じ取ったのであった。
何か変だが、自分の母親の作る料理なんてこんなもんだと無理やり納得すると、残ったシチューを白米と一緒にかきこんだ。
食器を台所に下げがてら、母親に文句を言うマリモン。
マリモン「何か今日のシチューの肉が不味かったね。消費期限とか大丈夫なの?」
マリモン母「うん?そうだった?なんか冷凍庫の奥の方に入ってたからもしかしたら古いお肉だったのかもしれないわね。」
マリモン父「あー!!!ブリブリブリ!!」
マリモン「あ!また父さんがウンコ漏らしたよ…。母さん始末頼むわ」
認知症になってしまった父親を蔑むような目で見るマリモン。
若い頃は屠畜場で働くブルーカラーであった父であった。
認知症になってしまった今でも、昔使っていた仕事道具である食肉解体用のナイフを毎晩研ぐことだけは習慣づいている。
子供の頃は自分のルーツについて悩まされる事もあったが、今では気持ちの整理がついているマリモンではあった。
マリモン「ところでペペ(飼い猫の名前)はまだ帰ってこないのかな?」
実家の団地で飼っている黒猫のペペ。
昔から臆病者でずっと団地から出ないで座敷猫だったのだが、ここ2週間ほど姿を見かけない。
続く